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パンとエスプレッソと嵐山庭園

2019,07 Arashiyama Kyoto

京都嵐山、天龍寺にほど近い場所に位置する、京都府指定有形文化財旧小林家住宅とその周辺建物を、美味しいパンが購入できコーヒーが楽しめるカフェ「パンとエスプレッソと嵐山庭園」として改装しました。文化財である茅葺屋根の民家旧小林家をカフェ棟とし整備し、近接する昭和に建設されたであろう古民家をパン工場とパンの販売スペースとして設えました。またそれぞれの敷地の間にあるお庭を設える事で、別敷地ながらお互いにお庭を楽しめるような関係を作り上げました。



歴史ある良い建物を安全に活用する

文化財である旧小林家住宅は不特定多数が利用する店舗として利用する場合、建築基準法上、現状の雰囲気(建物としての本来の価値)を損なわずに活用するのが難しい状況でした。そこで、建築基準法3条1項3号の但し書き条例を活用する事で合法的に現状の雰囲気を担保しつつ活用が出来るような手法をとりました。現行法規で担保できていない部分を補うため、構造補強や、防災上の補強を行いました。京都府内の民家での適用事例は少なく今後、古い建物を残していく上での先進的な事例となってほしいと考えています。



既存の良さを引き立てる新たな行燈壁

小林邸は築210年の歴史を持つ茅葺き屋根の民家で天井は高く天井面は薄暗くらく、その雰囲気が風情を作っています。この雰囲気をなるべく損なわずに清潔感のある食事スペースを実現するための改修を行いました。

照明器具から直接的に出る光を採用するのではなく、白い新設壁をポイントで設けて光を照射させ、柔らかい光を作ることで、昔の照明器具である行灯のような照明計画としました。本来の建物の明るさ感を損なわず、机周りが明るくなったことで機能として最適な照度を確保した室内空間を実現させました。



文化財の建物に取巻く難しい条件を周辺で補う運営計画

本建物は文化財であるために発生する改装制限や、引込める電気容量が少ない、ガスが使用できないなどの条件からカフェ棟は最低限のキッチン機能しか整備できず、本店舗のウリであるパンが製造できない状況がありました。そこで近接敷地で空き家になっていた古民家をパンの製造販売スペースとして改装し、カフェ棟にパンを下ろす計画とする事でパンを提供できる環境を整えました。また、カフェを利用したお客様がその足で近接するパン屋に足を運ぶという相乗効果も生み出しています。さらに、周辺美術館や宿泊施設へのパンの提供も今後検討しています。さらにはパン工場の2階を宿泊施設として整え、パンの焼ける匂いで目が覚め、焼きたてのパン朝食が提供できる宿の計画も進んでいます。

建築概要

計画地:京都府京都市右京区嵯峨天竜寺芒ノ馬場町45-15

竣工年月日:2019年7月

共同設計者:平岡 敬造 (Noiz design and architect)

構造設計:井手晃二 (井手晃二建築研究室)

グラフィックデザイン:鈴木一太郎

施工:株式会社井尻

写真:アトリエアフロ 鈴木

■「パンと」

建築面積:103.02㎡

延床面積:1階 103.02㎡ 2階 38.49㎡

構造:木造2階建て(一部鉄骨補強)

用途:物販店舗(パン屋)

■「エスプレッソと」

建築面積:142.04㎡

延床面積:142.04㎡

構造:木造平屋

工事:改修

用途:飲食店舗(カフェ)

★ AWARD : 京都デザイン賞・建築部門[入選]★SKY DESIGN AWARDS2020・インテリア部門[入選]★日本タイポグラフィ年鑑2020・VI部門[入選]
★ BOOK : 女性の心をつかむショップイメージグラフィックス
★ MEDIA : 商店建築 2021年5月号、architecturephoto 2019年12月2日

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